「借金は早く返したい」「今は投資でしょ」といった気分で決めると損得はわかりません。この2択は、じつは1つの比較に集約できます。
繰上返済で浮くのは、これから払うはずだった利息。つまり繰上返済は「ローン金利と同じ利回りを、確実に・無リスクで得る運用」と同じ意味になります。金利1.5%のローンを繰り上げれば、税引き後で年1.5%の“元本割れしない運用”をしたのと同じ。この確実性は、変動する投資にはない強みです。
ここがこの2択の最重要ポイントです。住宅ローン控除(減税)を受けている期間中は、年末残高の0.7%が所得税・住民税から戻ります(原則最長13年)。ローンを繰り上げると残高が減り、この戻り(0.7%)も減ってしまうのです。
全国銀行協会も、控除期間中は「ローン金利が0.7%以上か」を目安に判断すると整理しています。金利0.7%以上なら繰上の利息軽減が控除の減少を上回りやすく、0.7%を下回り控除を満額使えているなら控除が終わってからまとめて繰り上げる方が得になりやすい、という考え方です。(※かつて控除率は1%でしたが、2022年以降の入居は原則0.7%。古い「金利−1%」の目安のままだと判断を誤ります。)
投資に回すなら、まず非課税枠の新NISAから。金融庁の制度では、年間でつみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円=最大360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)。この枠を使い切っていないのに繰上返済だけに全振りするのは、非課税の“椅子”を空けたままという見方もできます。
ただし逆も真です。NISAは非課税でも元本は保証されません。暴落局面で取り崩す必要が出れば、確定利益どころか損失になり得ます。だから「枠があるから全部投資」も、この検証室のやり方ではありません。
将来の利回りは誰にもわかりません。そこで断定せず、あくまで「例としてこう置くと」という感度分析で見ます。ローン金利(実質)を上回る想定利回りなら、期待値としては投資が有利、下回るなら繰上が有利、という関係です。
| 実質ローン金利 | 投資を年3%と“仮定” | 投資を年5%と“仮定” |
|---|---|---|
| 0.5%(低金利固定・控除中) | 投資寄り | 投資寄り |
| 1.5% | 投資寄り | 投資寄り |
| 3.0% | 引き分け〜繰上寄り | 投資寄り |
| 3.5%以上(高金利・変動上昇) | 繰上寄り | 引き分け |
正直な注意点:上の「投資寄り」は期待値の話で、実際の結果ではありません。同じ想定でも、投資は年によって大きくマイナスになります。繰上返済の側は数字が小さくても100%確定・無リスク。この「確実性のプレミアム」をどう評価するかは、あなたのリスク許容度しだいです。
| あなたの状況 | 寄せ先 | 理由 |
|---|---|---|
| 変動金利で、金利上昇が不安 | 繰上返済 | 返済額増のリスクを確定で減らせる(確定リターン) |
| ローン金利が高い(3%台〜) | 繰上返済 | 実質金利が想定利回りに近く/上回り、確実性で有利 |
| 値動きで眠れない/近く取り崩す予定 | 繰上返済 | 元本割れの精神的・実損リスクを回避 |
| 低金利の固定(〜1%台)で控除も活用中 | 投資寄り | 実質金利が低く、長期の期待値では投資が上回りやすい |
| NISA枠が大きく余っている・投資期間が長い | 投資寄り | 非課税×時間分散でリスクを均しやすい |
| 生活防衛資金(数か月分)がまだ無い | どちらも保留 | まず現金の確保が先。繰上も投資もその後 |
流動性の視点:繰上返済したお金は基本戻せません(手元から消える)。一方、NISAの資産はいつでも売って現金化できます。急な出費に備える意味では、投資(=流動性を残す)にも合理性があります。ここも一律には決められません。