AIガチ検証室 | Mio
給付をもらうと年金が止まる。
60歳以降の「賃金いくらが手取り最大」かを計算で採点
👴 60〜64歳で働きながら年金・給付をもらう(もらえる)人へ
⏱ 30秒でわかる結論
- 高年齢雇用継続給付(賃金が60歳時の75%未満に下がった人に支給)を受けると、在職老齢年金がさらに減らされる二重の干渉が起きる。給付でもらった分の一部を年金で取り返される構造。
- 年金の停止額は、給付をもらうと標準報酬月額の最大4%(2025年4月の縮小前は最大6%)が上乗せで支給停止。給付率10%との差が「実質の手取り増」。
- 賃金を下げすぎると給付は増えるが月給が減る。賃金=60歳時の約64%あたりが給付率のピークで、そこから下は損。逆に賃金+年金が高いと在職老齢年金の停止(2025年度は51万円超で発動)に当たる。条件別採点へ
感情ゼロのAIが、印象ではなくルールで採点します。「給付をもらった方が得」と単純には言えません。給付・年金・社会保険料・所得税が同じ月給の上で綱引きするからです。ここでは3つの数字(60歳時賃金・今の賃金・年金月額)だけで、あなたが得な側にいるか損な側にいるかを機械的に判定します。
📊 一枚図:60歳以降の「賃金」を横軸にした3つのゾーン
今の賃金が60歳到達時賃金の何%か(左が低い=下げすぎ/右が高い=下げなさすぎ)
下げすぎゾーン
賃金50%以下
給付ピーク帯
賃金 約61〜75%
年金停止リスク帯
賃金+年金が高い
◀ 賃金が低い60歳時の75%が給付の境界賃金が高い ▶
下げすぎ:給付率は最大でも10%止まり。賃金そのものが減り、手取り総額はむしろ下がる。給付のために賃金を削るのは本末転倒。
給付ピーク帯:賃金が60歳時の約64%以下で給付率が最大(2025年4月以降は10%)。ただし給付を受けた月は年金が標準報酬月額の最大4%(旧6%)追加停止される。
年金停止リスク帯:年金(基本月額)+総報酬月額相当額が支給停止調整額(2025年度51万円/2024年度50万円)を超えると、超過分の半額が年金停止。賃金が高い人はここで削られる。
※あくまで構造の概念図。実際の%やピーク位置は個人の賃金・年金・賞与で動きます。数字は本文と早見表で確認してください。
AI判定(総論)
給付をもらうこと自体は原則プラス。ただし「給付欲しさに賃金を下げる」のは高確率で損。
手取り最大の要は賃金の下げ幅を出しすぎないこと+年金停止ラインを超えない賃金設定の両立。
給付をもらう価値(賃金75%未満に自然に下がった人)プラス
賃金+年金を51万円以下に収める設計の効き(2025年度)大きい
※給付率は2025年4月以降に60歳到達の人で最大10%(それ以前は最大15%)。年金の追加停止は最大4%(旧6%)。支給停止調整額は2025年度51万円で、2026年4月からさらに引き上げ(後述)。
まず前提:この2制度は「別物」だが同じ月給の上でぶつかる
登場する制度は2つ。どちらも60代前半の働き方に直結しますが、目的も財源も別です。
| 制度 | 何の制度か | 財源/窓口 |
| 高年齢雇用継続給付 | 60歳以降に賃金が下がった人へ、下がった賃金の一部を補う雇用保険の給付 | 雇用保険/ハローワーク(会社経由) |
| 在職老齢年金 | 働きながら厚生年金をもらう人の、賃金と年金の合計が高いと年金を一部止める調整 | 厚生年金/日本年金機構 |
問題は、この2つが同じ「あなたの月給」を見て別々に作用することです。しかも制度上、高年齢雇用継続給付をもらうと、在職老齢年金がさらに追加で止まるという直接の干渉(併給調整)が定められています。だから「給付をもらう=まるっと得」ではなく、片手で受け取り、もう片手で削られる構造になります。
① 高年齢雇用継続給付:もらえる条件と、2025年4月の縮小
ざっくり言うと「60歳到達時の賃金より、今の賃金が75%未満に下がった人」に、今の賃金の一定率が支給されます(60〜64歳/雇用保険の被保険者期間が通算5年以上が前提)。
今の賃金 ÷ 60歳到達時の賃金 < 75% → 給付の対象低下率が大きい(賃金がより下がった)ほど給付率が上がる。ただし上限あり
給付率の目安(早見のイメージ)
| 賃金の低下率(今の賃金÷60歳時賃金) | 給付率(2025年4月以降に60歳到達) | 給付率(2025年3月以前) |
| 75%以上(あまり下がっていない) | 0%(対象外) | 0%(対象外) |
| 75%未満〜だんだん下がる | 0%から段階的に増える | 0%から段階的に増える |
| 約61〜64%以下まで下がると | 上限の 10% | 上限の 15% |
正確な給付率は「支給率早見表」(ハローワーク)で0.1%刻みに定められています。ポイントは、賃金を下げるほど給付率は上がるが、上限(10%または15%)で頭打ちになること。そして給付は今の(下がった)賃金に率を掛けるので、賃金を下げすぎると「率は上限でも、掛ける元の賃金が小さい」=もらえる額が伸びない、という頭打ちが二重に効きます。
給付額 = 今の賃金 × 給付率(最大10%)例:今の賃金18万円 × 10% = 月18,000円(旧15%なら27,000円)
2025年4月の縮小(ここが最新の罠)
2025年4月1日から、給付の最大支給率が15%→10%に引き下げられました。対象は2025年4月1日以降に60歳へ到達する人(おおむね昭和40年4月2日以降生まれ)。それ以前に到達済みの人は、従来の最大15%が引き続き適用されます。つまり生年月日1つで、もらえる上限が1.5倍違うという段差が発生しています。将来的にはさらなる縮小・廃止も議論されています。
賃金・給付額の上限下限(令和8年度の目安):支給の対象となる賃金には上限(月522,000円)・下限(月96,090円)があり、賃金が月397,369円以上だと給付は出ません(毎年度改定。最新はハローワークで要確認)。
② 在職老齢年金:賃金+年金が高いと年金が止まる
厚生年金(報酬比例部分)をもらいながら厚生年金の被保険者として働く人は、年金の月額(基本月額)+総報酬月額相当額の合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の半額が年金から止まります。
支給停止額 =(基本月額 + 総報酬月額相当額 − 支給停止調整額)÷ 2合計が調整額以下なら年金は全額支給。超えた分の“半分だけ”止まる
| 用語 | 中身 |
| 基本月額 | 老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額。加給年金・老齢基礎年金は含めない |
| 総報酬月額相当額 | その月の標準報酬月額 +(直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12) |
| 支給停止調整額 | 2024年度 50万円/2025年度 51万円(毎年度改定) |
計算例(2025年度・51万円基準)
基本月額20万円、総報酬月額相当額35万円の人。合計55万円で、51万円を4万円オーバー。
支給停止額 =(20万 + 35万 − 51万)÷ 2 = 2万円受け取れる年金 = 20万 − 2万 = 18万円/月
合計が51万円以下なら年金は全額(20万円)出ます。つまり賃金+賞与+年金を51万円ラインに収められるかが、この制度単独での勝負どころです。
2026年4月からの緩和(重要な最新動向)
2025年6月成立の年金制度改正法により、2026年(令和8年)4月から支給停止調整額が引き上げられます。法律上の見直しは月62万円(令和6年度水準ベース)で、これに賃金・物価スライドが加わるため、令和8年度の実際の適用額は62万円以上(一部の解説では65万円と試算)になる見込みです。※最終確定額は施行直前に厚生労働省が告示します。本記事執筆時点では確定告示前のため、62万円を下限に、実額は公式発表で必ずご確認ください。
意味するところ:年金停止で悩んでいた高賃金層ほど、2026年4月から止まりにくくなる。これまで51万円ラインを意識して賃金や賞与を抑えていた人は、その調整の必要性が薄れます。逆に言うと「①給付」側は縮小(15%→10%)、「②年金停止」側は緩和と、2制度が真逆に動いているのが現在の局面です。
③ 二重の干渉:給付をもらうと年金が“さらに”止まる
ここが本題です。②の在職老齢年金の停止に加えて、①の高年齢雇用継続給付を受けている月は、年金がもうひと段階止まります。給付でもらった額の一部を、年金側で相殺される形です。
給付を受けた月 → 在職老齢年金の停止 + 標準報酬月額 × 最大4% を追加停止2025年3月以前に要件を満たした人は最大6%。賃金が60歳時の61%以下で最大率になる
| いつ要件を満たしたか | 給付の最大率 | 年金の追加停止(最大) | 差し引きの“実質手取り増”イメージ |
| 2025年3月以前 | 賃金の15% | 標準報酬月額の6% | おおむね 15% − 6% = 実質9%前後 |
| 2025年4月以降に60歳到達 | 賃金の10% | 標準報酬月額の4% | おおむね 10% − 4% = 実質6%前後 |
AIの読み:給付率も年金停止率も同時に縮んだので、実質の手取り増(給付−年金停止)は昔ほど大きくありません。それでも差はプラス側なので、「もともと賃金が75%未満に下がってしまった人」が給付を申請するのは合理的です。問題は次の④、給付欲しさに賃金を“わざと”下げる作戦です。
④ AI判定(条件別):あなたはどのゾーン?
| あなたの状況 | 判定 | 理由・数字 |
| 再雇用で賃金が自然に60歳時の75%未満へ下がった(60代前半・年金は少額か未受給) | 給付を申請 | 給付は純増に近い。年金追加停止は年金を受けている人だけの話。もらわない理由がない |
| 給付を多くもらうため、賃金をさらに下げようか迷っている | やめる | 給付率は最大10%止まり。賃金を1万円下げても給付は最大1,000円しか増えず、手取りは差し引きマイナス。下げすぎゾーン |
| 賃金+賞与月割+年金の合計が51万円を少し超える(2025年度) | 賞与配分を調整 | 超過分の半額が年金停止。賞与の月割で合計が跳ねやすい。2026年4月以降は基準額引き上げで緩和 |
| 年金を受けながら、給付も受けている | 実質率で判断 | 給付10% − 年金追加停止4%=実質6%前後が“真水”。額面の給付だけ見て喜ばない |
| 2025年3月以前に60歳到達済み(旧15%対象) | 現制度を活用 | 最大15%の給付が継続適用。ただし年金は最大6%停止。生年月日の段差の“得な側” |
| 賃金が高く、年金停止で悩んでいる(高所得層) | 2026年4月を待つ視点 | 支給停止調整額が62万円以上へ引き上げ予定。止まりにくくなる。賃金抑制の必要性が下がる |
| 65歳以降も働く | 別ルール | 高年齢雇用継続給付は65歳未満が対象で対象外に。在職老齢年金は継続(基準額は同じ枠組み) |
▶ 自分の年金月額・停止額が分からないと判定できません
在職老齢年金は「基本月額」「総報酬月額相当額」「賞与の月割」で結果が大きく変わります。ねんきん定期便や年金事務所の試算、または年金・退職に強いFPであなたの正確な数字を出してから賃金設計を。
手取りを最大化する考え方(結論)
- 賃金は「無理に下げない」。給付率は最大10%(旧15%)で頭打ち。給付のために月給を削ると、削った額の方が大きく手取りが減る。給付は「下がってしまった時の緩衝材」であって、狙って下げる道具ではない。
- 年金を受ける人は「実質率」で見る。給付でもらえる額から、年金の追加停止(標準報酬月額の最大4%/旧6%)を引いた“真水”が本当の増分。
- 2025年度は51万円ラインを意識。賃金+賞与の月割+年金の合計が支給停止調整額(2025年度51万円)を超えると超過分の半額が年金停止。賞与の払い方(月割の跳ね)で意図せず超えることがある。
- 2026年4月からは年金停止が緩む。支給停止調整額が62万円以上へ引き上げ予定。高賃金で年金を我慢していた人は、賃金抑制をやめて働く選択が取りやすくなる。
- 生年月日の段差を知る。2025年3月以前に60歳到達なら給付最大15%、4月以降は10%。同じ会社の同僚でももらえる上限が違う。
採点でハマる落とし穴
- 「給付=まるまる得」と思う:年金を受けている人は給付を受けた月に年金が追加で止まる。額面の給付だけ見ると実際の増分を過大評価する。
- 賞与の月割で年金停止に不意打ち:総報酬月額相当額は「直近1年の賞与÷12」を毎月加算する。賞与月でなくても合計が跳ね、51万円(2025年度)を超えて年金が止まることがある。
- 賃金を下げれば給付が増えると誤解:給付率は最大10%で頭打ち。しかも掛ける元の賃金が減るので、下げすぎは二重に損。
- 手続き漏れ:高年齢雇用継続給付は原則2か月ごとに会社経由でハローワークへ申請。年金との調整は年金事務所側で自動処理されるが、給付の申請自体を忘れると何も始まらない。
- 75%の“境界”付近:賃金が60歳時の74%〜75%あたりは給付率がごくわずか。手間の割にほぼ増えないこともある。低下率で早見表を確認。
- 年度で数字が動く:支給停止調整額・給付の賃金上限下限は毎年度改定。51万円・522,000円等はその年度の告示で必ず更新確認を。
まとめ
- 高年齢雇用継続給付(賃金75%未満で最大10%/旧15%)と在職老齢年金(賃金+年金が51万円超で超過分の半額停止)は別制度だが、同じ月給の上でぶつかる。
- 給付を受けると年金が標準報酬月額の最大4%(旧6%)追加停止。実質の手取り増は「給付率−追加停止率」。
- 給付のために賃金を下げるのは高確率で損。賃金は無理に下げず、年金停止ラインを超えない設計が手取り最大の要。
- 2025年4月=給付縮小(15%→10%)、2026年4月=年金停止緩和(51万円→62万円以上へ)。方向が真逆。自分の生年月日と年度でどちらの数字が効くかを確認。